ライターは、限られた情報から記事をまとめ上げ、読者に分かりやすく伝える役割を担います。
しかし、情報収集や原稿執筆の過程で「自分の感情」に左右されてしまうと、事実確認が不十分なまま結論づけてしまう危険があります。
こうした感情的決めつけは、誤情報の拡散や偏った視点の提供につながり、読者からの信頼を失う要因になります。
情報リテラシーを高めるためにも、その特徴と防止策を理解しておくことが不可欠です。
「感情的決めつけ」とは?
感情的決めつけ(Emotional Reasoning)とは、怒り・不安・好き嫌いなどの感情に引っ張られ、根拠を確認せずに結論を出してしまう思考パターンを指します。
例えばSNSで見かけた投稿を鵜呑みにして「きっとこうに違いない」と断言する、または取材対象者の一言に過剰反応して記事全体の論調を決めてしまうなどが典型例です。
「決めつけ」と「感情的決めつけ」の違い
「決めつけ」とは、十分な根拠や証拠がないまま物事を断定する思考パターンを指します。
たとえば「彼は一度遅刻したから無責任な人だ」と判断するように、データの不足や偏った経験だけで結論を出してしまうのが特徴です。
感情が強く関わるとは限らず、単なる思い込みや先入観が原因となることも少なくありません。
一方で「感情的決めつけ(Emotional Reasoning)」は、自分の感情そのものを事実と混同する点が最大の特徴です。
「不安だから失敗する」「腹が立つから相手が悪いに違いない」といったように、感情を“証拠”と見なしてしまうため、客観的に見れば根拠が乏しくても本人には確信的に感じられます。
簡潔にまとめると…
- 決めつけ=根拠のない断定
- 感情的決めつけ=感情を根拠にした断定
どちらも判断を誤らせますが、感情的決めつけは感情が高ぶった場面で起こりやすく、冷静さを取り戻す意識が特に重要です。
認知の歪みとの関係
感情的決めつけは、心理学でいう認知の歪みの一種であり、認知バイアスとも関連する思考の偏りです。
認知バイアスは、人間が情報を処理する際に起こりやすい思考の偏りを指し、「思い込み」とも重なります。
特に「証拠より感情を優先する」傾向は、ライターにとって見逃せない課題です。事実を確認する前に自分の意見を固めてしまうと、記事全体が偏った方向へ傾きやすくなります。
参考記事:
ライターが陥りやすいシーン
- 強い主観を持つテーマ:自分の好き嫌いや信念が強く働くと、反証や別視点を排除してしまう。
- PVや話題性を優先する場合:「読まれる」ことを最優先し、刺激的な言葉で煽る方向に引っ張られる。
- 締切間近の原稿判断:時間に追われて焦ると、深く調査する前に「これでいいだろう」と結論づけてしまう。
防止策・改善方法
- ファクトチェックを徹底する:情報源が一次資料かどうか、日付や出典を必ず確認。
- 複数ソースを比較:信頼できる複数の情報源から同じ内容を照合して、裏付けを取る。
- 第三者やAIレビューを活用:執筆後に編集者やAIにチェックしてもらう。
実務で役立つチェックリスト
- 見出しや本文に「断定的」な表現はないか。
- 情報の出典が明確か。引用元が一次情報であるか。
- 自分の意見や仮説に反する情報を意識的に探したか。
このようなチェックを習慣化するだけで、感情的決めつけを大幅に減らすことができます。
まとめ
感情的決めつけは、誰もが無意識のうちに陥る可能性があります。しかし、ライターにとっては読者の信頼を左右する重要なポイントです。
事実確認を怠らず、複数の視点を検証することで、中立かつ信頼できる記事を提供できます。
情報リテラシーを磨くことは、ライターとしての価値を高め、読者に支持される第一歩となるでしょう。